ひつじのぬくぬく日和

40代パート主婦、夫と高3娘と黒猫♀の三人と一匹家族。

黒死荘の殺人/カーター・ディクスン

犯人のヒントが所々に練り込まれて、あらすじを説明しようとすると、アレもコレも言いたくなる(^^)清書するの大変だった。

でも、暫くすると内容忘れたりするし、まだ未読と思ったら読んだことあったりするからなるべく記録したいな…と。

はじめ読んだ時は意外な犯人だけど、次からは冷静になるから何で分からなかったんだろ?としみじみ思う(・・;)

過去の事件との絡め方も緻密。今回は犯人が黒死荘にまつわる話を利用した事件だが、書簡の頃の怪奇現象はルイスの亡霊の仕業?

 

<ネタバレあり>

f:id:hitsujinoJ:20190907084856j:image

友人ディーンの曰く付きの屋敷で降霊会があり、インチキを見破るのに付き合って欲しいと頼まれたブレーク。黒死荘と聞き知人で黒死荘に興味のあるマスターズ警部を誘って屋敷へ向かう。道中、警部に博物館で盗まれたルイスの短剣と黒死荘との関連を示す本と書簡を渡される。

降霊会の参加者はディーンの伯母ベニング夫人、彼の婚約者マリオン、マリオンの弟テッド、ベニング夫人に招待されたフェザートン少佐。降霊会はディーンの兄ジェームズを溺愛する伯母が彼の魂を鎮める為に開いたものだ。

屋敷を探索中、警部の後任のマクドネル巡査と遭遇。

テッドとは友人で、彼を通して少佐主催の晩餐会に招かる。ダーワースは助手のジョゼフを麻薬で憑依状態にし、不味い状況になったら一切の泥をかぶせる身代わりの操り人形にしていると確信。そこで自動筆記の実演が行われ、その紙を見てダーワースがひどいショックを受けて固まりルイスと関係があると口にした。紙には"残るはあと7日""人名""埋める"という言葉が見えたと語る。

 

盗まれた短剣の持ち主、ルイスはこの屋敷内に埋められている。今日はルイスの命日。

 

詳しくは、渡した本と書簡を見る様言い残し、二人は助手のジョゼフをダーワースから引き離しに行く。包みの中にはジェームズの自殺記事もあり、伯母の家でピストル自殺した事、自殺前、家の中を何か探していた事、検視審問中に伯母が二度泣き崩れた事が記されていた。書簡に目を移すブレーク。

屋敷の前主人の弟チャールズが、毎夜うなされ喉を掻きむしり、窓下を通る乳搾り女を大きな腫物があるから監禁しろと命じるなど奇行が見え始めた頃、屋敷内では面体が悪く別室に追いやられた使用人が、あの石室は誤って汚水溜の上に建てられたなんて偽りだ見ていろ…と一晩泊る。翌日、自分をかつごうとしてドアを開けようとしたり、窓から覗こうとしたのは誰だと問うと、あの窓から中を覗けるのっぽはいないと返され青ざめる使用人。言いががり状、石室に泊まり続けるハメになる。

やがてチャールズの容体が悪化。廊下の暗がりで何者かとすれ違った者が続出するも、気分を悪くしたりで何者か実際見た者はいない。窓棚の花に水やりをしに来たメイドが大きな腫物をした手が花を掻き分け千枚通しかナイフのようなもので窓をこじ開けようとガリガリやり始め卒倒するなど怪奇現象が起こる。

ある日、石室に泊まり続けていた使用人が悲鳴をあげ、駆け付けると"あれが千枚通しで格子を切って入って来ようとする!顔もはっきり見た!"と言い出す。その晩、チャールズは喉を切って自殺する。納棺の準備の時には、顔や体にあった腫物は消えていたという。

一連の流れから、昔、黒死病が猛威を奮っていた頃、主人の父が病で倒れ石室に運び看病が続いた時、執事の腹違いの弟で絞刑吏の助手のルイスが屋敷に現れた時の事が語られる。

太い千枚通しの様な短剣を下げていた事、それで罪人を切り刻む様子を自慢げに話したり、厭わしい生業に狂った様に精を出してた為、疫病の様に忌み嫌われていた事。現れた時、既に疫病にかかっており、石室に無理に入ろうとして松明で追い払われ木の根元で生き絶え、そこに地底深く埋められた事。死に間際に必ずここに戻って来てあの部屋に入り、中にいる奴を殺してやると言い残した事。

 

そこまで読んだ時、耳障りな鐘の音が鳴る。

 

密室状態の石室で降霊術者のダーワースが血の海の中事切れていた。すぐ側には博物館から盗まれたルイスの短剣が。周囲に足跡はない。鐘は死に際にダーワースが鳴らしたものだった。

 

まるで、ルイスの呪いどおり。

 

塀の上木の上に、木の上から石室の屋根の上にと移動出来そうと言う警部に巡査が木が腐ってるからよほど身軽な者でないと無理と巡査。

石室でダーワースが祈祷中、ジョゼフは巡査に見張られながら二人でトランプをしていた。居間ではベニング夫人から"皆で彼の後押しをしましょう"と祈祷が始まる。暗闇の中、右から夫人、ディーン、マリオン、少佐、テッドが並び座る。足音や後ろを通ったり、立ち上がる気配がした者、祈祷に集中して何も気付かなかった者と証言はマチマチで、マリオンから短剣の柄が首筋に触れたと証言を得る。

テッドは石鹸や岩塩の彫刻の話でダーワースと仲が深まり、失恋の痛手をダーワースのおかげで克服してから狂信者になったと告白。

また、少佐の証言から例の紙は"エルシー・フェンウィックがどこに埋められているか知っている"と判明。

エルシーは心霊術に凝った大金持ちの老婆でダーワースの最初の妻だ。金目当てで砒素で殺そうとしたが、メイドが夫人が自ら飲んだと証言、夫人も彼を庇う。失敗から学び次は医師の診断書を携え鬱で記憶喪失の妻が失踪したと訴える。不審に思った警察からマークされるも証拠不十分で遺産を得た。

また、ダーワースはマリオンにご執心で、"ディーンは黒死荘に縛られている。取り除くにはかなりの危険が伴うから貴女の感謝が欲しい"と言い寄り悪霊を払った暁には結婚するとも言っていた。

 

そして捜査中、短剣が盗まれる。

 

少佐とブレークは陸軍省の偉物、メリヴェール卿に助けを求める。

ダーワースの弁護士立会いで彼の家を調べに行く警部。ベニング夫人がいて"ここはジェームズの部屋だから出て行け"とうわ言を繰り返し座り込み、いかさま道具が家の至る所から出て来たら目を閉じて泣き出し、出て行く時、私の事よりマリオンを気にかけろ、弟がいなくなったんだからと言ったのが気になり、マリオンに電話。

するとテッドは昨夜の聴取後明け方帰宅し暫くして"調査に出かける心配無用"とメイドにメモを渡し出て行った。いつもの気まぐれと思いベニング夫人や心当たりに電話するも見つからない。旅行鞄一つで姿を消したテッドを指名手配した警部。

また、明け方テッドと甲高い声が"きっと疑ったことは一度もないでしょう?"と話すのを聞いたと証言が取れた。帰宅した時十字架を手にしていたとも。

そして、エルシーが自ら飲んだと証言したメイドのグレンダは死亡宣告をまちダーワースと結婚してニースに在住と報告が入る。

更に、ダーワースの遺体に自傷不可能な傷がある事から共犯者がいたと推測。大金が唸るほどある彼には、世間を唸らせマリオンを搦め取りエゴを満足させる為なら自分の体に傷を負わせるのも厭わなかっただろう。石室でルイスの亡霊に襲われる演出をする計画だった。

メリヴェール卿の指示でダーワースの家の地下室に潜入し、霊媒の道具を作るのに使われた旋盤から白い粉を採取。そこには切手サイズに畳めるジェームズのマスクもあった。

警部の部下がジョゼフの家を見張っていたら、タクシーから彼ともう一人が降りて家に入るのを目撃。霧と雨で誰かは不明。

 

そして、ジョゼフがルイスの短剣で殺される。

 

犯人はジョゼフの後ろに回りクロロフォルムを嗅がせ地下に引きずり殺害。炉にくべられた。

家主のスウィーニー夫人はダーワースとは心霊研究で知り合い、ジョゼフは捨て子でダーワースに拾われここに住んでいる。午後は映画を観に行くと言って出かけたと証言。怖いから友人宅に泊まりたいと言う彼女の様子から怪しさを感じ調べると、家の前の持ち主はダーワースだった。

ブレークは婚約者のアンジェラと姉のアガサの晩餐に招待される。話題はダーワースの事件になりアンジェラ曰く、その妻はサーカスやショーに出ていたが女優に転身したらしい。

 

石室で事件の再現を始めるメリヴェール卿。

 

ある人物をが来ることになっているが姿が見えず、外で悲鳴と銃声がして駆け寄るとダーワースの妻グレンダが…ジョゼフは彼女の変装だった。警察に追い詰められ自身を銃で撃つ。

ダーワースはマリオンにのぼせ上がるも、頭の切れる妻がいる。時期を待って否応なく結婚を強いた女傑。弱味も握っている。グレンダは夫に殺される前に先制攻撃に出た。夫が死ねば遺産も手に入る。

ダーワースに協力しながら巧妙に夫殺しをルイスの霊に殺されたと見立てる。

サーカスやショーで軽業やピストルを扱ってた彼女なら犯行可能。ジョゼフを見張ってた巡査は彼女と従犯。ダーワースの行動を探る様命を受けやがてジョゼフの正体を知る。彼女の手練手管で骨抜きに。例の紙を仕込んだのも彼。

岩塩の弾丸は溶けてなくなるし短剣の太さが弾丸と同じになる様、短剣を旋盤で削ることで凶器を短剣だと思わせる。

マリオンの首筋にあたったのは短剣ではなく、テッドの十字架。心霊を見たい気持ちが抑えられず、悪霊に対する武器でメジャーな十字架を手に席を立ち去る。

そして、石室の窓からダーワースを射殺する所をテッドに見られるか立ち去る姿を見られる。テッドを誘き寄せ殺害し遺体をジョゼフに見立てる。ジョゼフが姿を消すことは計画の一部だ。おそらく"きっと疑ったことは一度もないでしょ"という声から察するに、"犯人は降霊会のメンバーで明日自分家に来てくれたら証拠を見せる"とでも言ったのだろう。

テッドの偽の足取りも用意する。彼が犯人で国外逃亡したとなるように。

ダーワースは自分の自由が効き家が欲しかったので自分の脅しが効くスウィーニー夫人を家主にした。夫人の怖いんですはグレンダに始末されると思ったから。

ちなみに巡査はグレンダ召し捕り部隊に加わりグレンダを逃がそうとする。二発の銃声は巡査と思いきや、グレンダだった。巡査なな"ありがとう"と述べて彼の頭に二発撃った音だった。